電脳春秋 – 〈第 12 回〉 やむなく始めた自社ホームページでの求人で成功


電脳春秋

執筆:H.F

〈第 12 回〉 やむなく始めた自社ホームページでの求人で成功

今の会社が設立されて 5 年が経過した。設立当初の資本金は、株式会社として必要な最小限度の 1000 万円であり、社員数も多めに数えて 4 名に過ぎなかった。要するに、どこにでもあるできたばかりの零細企業である。

会社の将来など分かろうはずもなく、とりあえず狭い部屋を借りた。最初は、インターネットにつなぐ費用さえ危ぶまれたが、仲間がやっているプロバイダとの間を安く繋ぎ、何とか会社のホームページも立ち上げ、 IT 関連企業らしさだけは何とか取り繕った。

さて、仕事の方であるが、長年コンピュータ業界に居座っている人々が集まって始めたこともあり、仕事を取るためのコネは若干ながらあった。しかし、人を集めることはなかなかに難しい。設立したばかりで、どうなるか設立者達さえ予測できない状況の会社に、そうやすやすと就職しようという物好きが現れる訳がない。

求人で一番よくあるのは、新聞や雑誌などの募集広告である。しかし、求人広告は、一般の広告よりも料金が高く、その上スペースも限られているので、あまり情報が載せられない。いずれにしろ、求人広告は考えるまでもなく不可能であった。

零細企業では、新卒を採用して、じっくり教育して、それからじっくり稼いでもらうなんて悠長なことは不可能である。即戦力になる人を募集しなければならない。即戦力になれそうな若い人があちこちの知り合いの会社にいても、そういう人を引っ張って来ては、色々な対立、紛争の原因になってしまう。

ということで始めようとしたのが、自社ホームページでの求人である。これなら、お金は全然かからない。しかし、自社ホームページの知名度が高くないと、見てもらうことができない。

そのころ、実験として始めた私の個人ホームページはどんどんアクセスが増え、 1000 万ヒット記念出版が準備されていた。出版に手間取っている間に、本が出た時には 1500 万ヒットを越えてしまった。このホームページの中に、それとなく求人情報を置くことで、今の会社の求人を始めた。会社のホームページの整理がついたころ、いつまでも個人ページで求人するのもよくないので、会社のホームページ内に求人情報を移動した。

ホームページによる求人は、結果的には大変な成功であった。費用が安く済んだのはもちろんだが、それ以上に、優秀な技術者集めに大変効果があった。社内活動なども技術的な面をかなり詳しく公開したことで、技術者の興味を引いたようである。また、面接の前にメールでやりとりすることもでき、互いに無駄も省ける。

今では、自社ホームページによる求人以外は考えるつもりもない。少なくとも、コンピュータ技術者に関してはそれで十分である。コンピュータ業界団体の集まりなどで、「どうも人が集まらなくて」という話を聞くが、さっぱり理解できない。