採用最前線物語 – 30.学生不在の産学連携セミナー


採用最前線物語

執筆:H.F

学生不在の産学連携セミナー

ほんの数年前までは、産業界と非常に密な関係にある研究室や教官は、学内ではあまり良い評価を得られない情况であった。象牙の搭にこもり、社会と隔絶していることを良しとした。

ここ数年、産学連携が叫ばれ、大学が企業に向けた活動が活発だ。産業界を知らない、もしかしなくても社会をほとんど知らない教官たちに、急に産学連携して技術を売れといっても、悪戦苦闘するしかない。

企業を巻き込むために、多くの大学で、企業向けのセミナーが非常に盛んである。大学の研究と人脈で、産業、経済に関係ありそうなセミナーが、ほとんど毎日のように東京の有名大学で行われている。それらの多くは、無料か、無料に近い参加費ですむ。講演者も著名な人が多く、ノーベル賞授賞者もときどきいる。

連携している大学、関係者が教官をやっている大学などのセミナーにときどき出席している。こっそり出席していると、出席がばれて発言を求められてしまうこともある。

しかし、不思議なことがある。そういう学内のセミナーや、交流会、懇親会というものに、学生の姿がほとんど見られない。出席者は、年を召された偉い教授の方々と、企業の方が圧倒的に多い。

大学に来ているのに、学生、院生の姿が見られないのは不思議である。数から言えば圧倒的に多いはずなのに、なぜ学生や院生がこういう学外者が集まる会に出席しないのだろうか。また、なぜ教官や職員は、もっと学内にアピールしなのだろうか。それとも、学生の参加は禁止なのだろうか。

企業の考え方を学生が直接聞けるチャンスである。本を読めば載っているようなことを聞く講義などより、学外の者から企業、社会の実際を聞く方がよぼど教育として意味があるのではないか。

学生の参加費は、飲食できる懇親会でも無料が普通である。会社説明会で上っ面の話を聞くよりも、アルコールが入った状態で、企業の内情を聞く方が就職を考える上でもはるかに参考になるだろう。