採用最前線物語 – 49.研究者は変人でないと駄目か


採用最前線物語

執筆:H.F

研究者は変人でないと駄目か

研究で、素晴しい発明や発見がなされ、製造工程に劇的な変化が起きたり、今まで不可能と思われたことが可能になることがある。社会的にも大きな影響を及ぼし、マスコミでも大きく取りあげられ、会社も大きな利益を上げ、研究者自身にも恩恵があることがある。

しかし、こういうことが発生する確率は、実は非常に低い。そもそも、簡単に実現できるようなことなら、自分がやる前に、他人が既にやっていると思うべきである。

研究は成功率が低いことが分かっているが、ある程度の規模の会社になると研究部門を持ち、直ぐには利益に直結しないことを行なっている。研究として成功しても、実用化までの道も遠いものだ。短気利益だけを追究するなら、そういうことは止めるに限るはずだが、多くの企業がそうはしていない。

理由は簡単で、今だけ良くても、数年先に競争力が落ちていては、会社の未来は怪しくなってくる。いま高収益をあげられる製品や技術も、いずれは寿命がやってくるが、寿命が来たときに次を考えていたのでは当然間に合わない。それより前に何かビジネスの種を見つけ出さねばならないので、企業はある程度の規模になり自転車操業を抜け出すと研究をやらざるを得なくなる。

さて、研究に向くのはどういう人であろうか。頭が良い人と考える人が多いだろうが、学校の成績が良いこととはおよそ関係がない。人が既にやったことをいくら理解するのが上手でも、それは後追いでしかなく、どこまで頑張っても二番手にしかなれない。これでは、研究ではなく、お勉強に過ぎない。

人が考えもつかないこと、やるべきではないだろうと思うようなことをついやってみる、そして、じっくり観察し、他の人が見過ごすような些細なことから法則を見つけ出したりする能力が求められる。でも、研究というのは、こんなに簡単に片付けられるようなものではないが、今回はここまでとする。

ところで、日立中央研究所に行くには返仁橋を渡っていく。そして、所内の博士号取得者の会を 『返仁会』という。もちろん、変人が本来意味するところであり、周囲に変人と思われてやっと一人前と言える。あなたには、そう思われても、研究を続けられる自信はありますか? 自分からそう言い切れる自信はありますか?