採用最前線物語 – 51.究極のマーケティング魄/下


採用最前線物語

執筆:H.F

究極のマーケティング魄/下

さて、続きだが、お客にあれこれ聞くのはよくある方法だ。それを徹底して行なえれば、素晴しいマーケティング効果が出るのは当然だ。皆、自分の趣味、趣向、主義などに左右されてしまい、まったくマーケティングの原則を忘れて失敗する。

でも、これだけで話が終るのではない。いつでも都合良くお客に話を聞ける訳ではない。お客に話を聞くよりも前に、書店だからこそ事前に入手できる情報から、どれが売れるかを予測しなければいけない。売れそうなものを大量に仕入れて一気に売りさばいてしまえれば、大変な利益になる。

さて、彼はどうしたであろうか。

少女コミックなど、さっぱり分からない。しかし、それではどうにもならないので、売れると思われる本、売れないと思われる本の予想を立てた。そして、結果と比較してみた。見事に外れたそうである。何度やっても外れたそうである。

そこで、彼は究極の手を考えた。しっかり自分で考えて、どれが売れるか、どれが売れないかを予測した。

ここまでは誰でもやるだろうが、自分の予想の正反対に結果はなるはずだからと、自分の予測では駄目と思われる本を大量に仕入れて目立つように並べたそうだ。

そのおかげで、スーパー書店員と言われるまでになったのである。

将来予測に関して、多くの人は、当てたり外したりで、まったくでたらめである。一部の人は、しっかり当てる。しかし、別の一部の人は、きちんと外す。まるで、○×試験で、全部答えて零点を取るようなことをする。

私の周囲にも、かなり確実に外す人がいる。本人自身も良く外すことを認識しているのだが、まだ自分の考えの逆の行動を取るところまでの境地に到達していない。

己の無能さを冷静に評価し、さらに活用してしまうのは、自己評価の究極ではないだろうか。もはや悟りだろうか。