電脳春秋 – 〈第 27 回〉  教員がお節介過ぎる日本の学生インターンシップ


電脳春秋

執筆:H.F

〈第 27 回〉  教員がお節介過ぎる日本の学生インターンシップ

大学では、知識の修得がどうしても中心になるだろうが、現場では、それは当然のことで、さらに顧客の要求を満たすか、売れるか、予定日に間に合うか、費用は範囲内か、など多数の要求がある。さらに、事故、失敗など予定外のことが都合悪く発生するのが実際の仕事である。

そういう現場を学生のうちに経験した上で授業を受ければ知識も本物になろうということか、昔から企業実習は一部では存在していた。最近は呼び名が横文字になり、学生インターンシップという。通常は夏休みなどに、 2 、 3 週間程度、企業で実習を行う。この学生インターンシップは、最近日本の大学でも熱心になってきた。

インターンシップといっても、 2 つのタイプがある。 1 つのタイプは、大学が教育の一貫として行い、単位が与えられる。担当教官がいて、大学や大学連合で企業を招いての説明会があり、何度か聞きに行った。大学の随分偉い人が基調講演をしてくれたり、インターンシップの制度について熱心な説明がある。単位もあり、担当教官もいて、しっかり大学がサポートしている話はしてくれるのだが、本来中心にいるべき学生の姿が見えないことが非常に多い。

インターンシップ体験発表会では、さすがに体験者である学生が発表したが、お膳立ては教官が全てやっていて、がっくりした。教官がインターンシップの有効性を力説すればするほど、なんだかむなしい感じがしてしまう。大失敗しても良いから、説明会くらい学生にやらせれば良い経験が積めるのに、といつも思う。

もう 1 つのタイプは、企業が勝手に学生インターンシップを行うもので、単位に結びつくかどうかは大学次第である。実は、学生にはこちらの方が圧倒的に人気があるそうだ。企業での体験をしたければ、学生が自ら企業にコンタクトを取って自主的に行動するしかないので、積極的な学生が集まり、企業の方も熱心になるようである。

さて、実は第 3 のタイプとして、海外インターンシップがある。日本人学生は海外で体験し、日本の企業は海外の大学生を受け入れる。アイセックはこれを行っている学生組織として 1948 年に始まり、全世界の大学に広がっている。国内インターンシップとの違いは、学生があらゆることを行う。大学の 1 、 2 年生が、企業に海外からの研修生の受け入れを頼みに行く。働きに来る学生の入国手続きなども全部学生の手で行われる。こういうことをすれば、早い段階で企業や社会が把握でき、当然様々な学習に役立つに違いない。

成田で行われたアイセックの国際大会に出席したことがある。全世界から学生が集い、何日間も議論したり、遊んだり、交流をする。私が招かれたのは、レセプションだけであるが、何百人もの学生や OB や受入企業の人々で会場は大変な熱気であった。それを、アイセック・ジャパンの学生が英語で見事に取り仕切っていく。もちろん、この会場には、教官らしき人はいなかった。適当に各国の学生と話をしながら名刺交換していたら、一気に 10 カ国以上の国の名刺が集まった。こちらが色々経験させてもらった感じであった。

学生の仕事に対する関心の度合い、とくに実際に自ら仕事の真っ只中に飛び込むチャレンジ精神には大差がある。アイセックのように熱心に活動していると、海外で 1 年くらい働くこともあり、留年も珍しくないと思うが、単に成績の良い学生よりも、そういう学生に出会いたいものだ。

特定非営利活動法人アイセック・ジャパン