電脳春秋 – 〈第 8 回〉 英語の Unix 解説書が偶然会社の本箱にあった


電脳春秋

執筆:H.F

〈第 8 回〉 英語の Unix 解説書が偶然会社の本箱にあった

最近はパソコンで動く Unix 、とくに Linux がどんどん盛んに使われるようになり、利用者もかなり多くなった。 Linux はパソコンに入れて個人的に使う場合もあれば、サーバーとしての利用もずいぶん多い。私がふだん仕事で利用しているパソコンも Linux であり、すでに 8 年近く毎日のように使い続けている OS なので、なくてはならない空気のような存在になっている。

最初に入ったマイコン系出版社のソフト開発子会社では、本箱の片隅に洋書の本が置いてあった。どういう経緯か、小さい会社のわりには、コンピュータ関係の洋書が何冊もあり、ときどき眺めていた。その中に、 Unix の解説書があり、それを読み出したのが、 1979 年頃だったと思う。

そのころは、研究者ですらなかなか Unix が使えない時代で、日本国内の Unix 利用者もかなり珍しかったと思う。使っているだけでも十分研究として通用していた時代だ。

今なら、 Unix の勉強は、実際に動くパソコンを使いながら本に書かれている内容を確認しながらできるが、 Unix マシンが使えなかったので、とりあえず本を通読した。読んでも使える訳ではなかったが、仕事で使っている小型コンピュータや大型コンピュータとは全然違う世界が見えたので、大変興味深く読んだ。アメリカのベル研究所では、こういうのを作って大学などに盛んに配っていることもわかった。

コンピューターショーに行ったとき、偶然あるメーカーが本社研究所にある Unix マシンをショーの会場から使えるということで、ちょっと遊ばせてもらったことがある。本を読んだだけでたいした知識もなく、一部のコマンドを知っているだけだったが、大変珍しがられた。

そのうち、偶然会合で東大の助手と知り合いになり、研究室で 16 ビットマシンに Unix を入れて使っているというので見に行った。そのマシンで、実際に機械を制御し、いろいろと研究に使っていて、ぜひ Unix を使うようにと強く勧められた。

しばらくして、出版社の方で最先端のコンピュータを導入し、 Unix を使うことになり、本格的に取り組むことになった。今なら Linux などは、本や雑誌についた CD から簡単にインストールして使うことができるが、そのときは大きな磁気テープで渡されて、それをインストールして使うというなかなか面倒な状態であった。動作のおかしい個所があり色々調べていたら、商社の技術担当者が直接アメリカまで調整に行くなんてこともあった。

当時 Unix 用として使っていたコンピュータは、今のパソコンの 1000 分の 1 程度の性能しかなかったが、パソコン関係のソフト開発に利用し、その後はパソコン通信などにも使われた。導入したマシンや Unix 関係の説明書のほぼすべてが英語であったが、使いたいので延々と読んだものである。

最初に Unix の勉強のために読んだ本は、後の改訂版を翻訳することになり、翻訳者探しや校正にもつきあうこととなった。まだ日本語の Unix の本が非常に少ない頃に出版したので、まだ訳語が決まっていない専門用語も多く、色々苦労させられた。