採用最前線物語 – 50.究極のマーケティング魄/上


採用最前線物語

執筆:H.F

究極のマーケティング魄/上

マーケティングという言葉がビジネスの世界ではよく使われる。マーケット=市場について調べるのがマーケティングだと思うが、多くの場合、マーケティングという言葉は隠れみので、自分のやりたいこと、正しいと思い込んでいることを、あたかもマーケティングの結果だとねじ曲げて主張する者が多い。

市場調査をするには、まず冷静に市場を見ることが何より重要だ。私情を一切混じえず、あるがままに把握し、何が求められているか、何を、どのようなものを売り出せば良いかを把握することである。

ひとり、マーケティングの神様のように呼ばれている知り合いがいるので、紹介しよう。今は大変な出版不況であるが、彼は、書店業界では知らない者はいないスーパー書店員だった。今は、大手書店のコンサルタントや、書籍の企画をやっているようだ。

何も考えない書店員は、書籍流通で送られて来た書籍、雑誌を柵に並べるだけである。新刊はとりあえず平積みし、売れ行きが落ちたら柵に背表紙だけ見えるようにつっこみ、それでも売れなくなったら戻すくらいであろう。

彼は、書店で立ち読みしている客の行動を常に盗み見していた。とくに、2 名で来るお客が大切で、良く知っていると思われる方がもう一名に、どの本が良いか、どれがゴミか、説明していく場合が多いそうだ。これをしっかり立聞きして、書店のレイアウトや仕入れに生かすそうだ。もっと知りたくなった場合には、お客に声をかけて話をするそうだ。

あるとき、コミックの販売担当になってしまったが、どれが売れ筋なのか分からない。売れたものを仕入れていたのでは、実際には間に合わない。東京のように書店がいくらでもあるところで品切だったら、さっさと別の書店へ行ってしまう。

少女コミックなど、見てもさっぱり分からないので困っていたが、例によって立ち読みしている女子高校生たちに頼ったそうだ。女子高校生の団体にひとりおじさんがまじって、喫茶店で少女コミック談義をしてもらったそうだ。補導されないのが不思議なような団体だ。もちろん、喫茶店代はおじさんの勉強代ということで出したそうだ。

(続く)