システム随想 -「システム随想」インターネット連載にあたって


システム随想

執筆:代表取締役社長 佐藤

「システム随想」インターネット連載にあたって

コンピュータが実用化されほぼ 40 年、コンピュータの技術進化とともにあらゆる分野、業種にコンピュータシステムが浸透し社会のしくみを変化、向上させてきました。金融、商券、運輸、流通、管制、電力、生産、報道などコンピュータシステムは基幹業務を支える不可欠な存在として当たり前のように利用されています。

今グローバル化のもと、業界・業種の再編を迎え、大きくは日本自身のモデルチェンジに向けて世の中は急ピッチで動き出しています。その動きの牽引は IT であり、IT を結集した新しいしくみ、いわゆるコンピュータシステムは新たな局面を迎えています。

インターネットによる国際化とビジネススキームの変革、モバイルによる個人ライフスタイルとの直接的な関わり合い、人間の「知」「感性」の分野への侵食などますますコンピュータシステムの利用裾野が広がり多様化・複雑化する一方です。

システムはなぜ必要かその評価もままならず、その効果、成果が見えにくい今、私たちは技術の進歩、ニーズの高度化を全力で追いかける少しの間、踊り場にたち「システムとは一体何か」の原理原則を振り返える必要があると感じています。

私は、某大手総合電気メーカーの電算機事業部で社会人をスタートしました。タイムインターメディアを 8 年前に創業するまでの 20 数年間のすべてはコンピュータシステムを世に送り出すことで、30 数種類のシステムを開発、約 200 ユーザにシステムを納入しました。いわゆるパーケージものではなくユーザニーズを分析してひとつひとつ創り上げるスクラッチ型システムがほとんどです。

今思い出しても、アジア・中近東を舞台にしたトムソン社(フランス)やウエスチィングハウス社(アメリカ)との「航空管制レーダ情報システム」の機能面、性能面でのし烈な競争、列車やバスの「ダイヤ自動編成システム」の開発にあたり「なぜもかく人間がすべての要件を満たす芸術的ダイヤが作れるのか」のノウハウが知りたくて現場に 2 ヶ月通いつめたこと、動いてからのシステム仕様の食い違いに怒り心頭のお客様が大型トラックをコンピュータ室に横付けして「もって帰れ」と怒鳴られたこと(このお客様とは今でも親友のつき合いをしています)、また自信を持って納品した「新聞自動製作システム( CTS )」がただの 1 ビットのデータの不具合で何も印刷されない真っ白な新聞を数万部発行してしまい自分も真っ白になり動けなくなったこと・・・。いろいろ体験しました。苦しくも楽しく社会的インパクトからも意義のあるシステムに携わってきたと自負しています。「システム隋想」ではこれらを振り返ってみます。

このことは、単なる「思い出」ではなく今のシステム化で見失っていること、これからのシステムに生かせることなどが多くあると信じています。

システムは漠然とそこに存在しているわけではありません。そのシステムを夢に描いた人、そのシステムを必要とした人、そのシステムを信じトップを説得した人、そのシステムを設計し開発した人、ひたすら検査やテストに没頭した人、システムを利用している人、システムを守っている人、システムのさらに将来を考えている人・・・。

コンピュータシステムは多くの人がいろいろな立場で織り成す人間模様です。人の思いと価値観を投影し凝縮した成果、それがシステムであり、だからこそシステムが現場に受け入れられ、社会に組み込まれていく原点と考えます。

システムは人間が創り出す「生き物」です。生き物ですから目的を明確にして誕生させ健康で動けるようケアしさらに環境に合わせて進化成長させなければなりません。この目的化、誕生、ケア、進化成長をトータルにサポートすることがシステムライフソリューションでありタイムインターメディア企業の理念です。

本コラム「システム随想」ではシステムライフソリューションのコンセプトを獲得するに至った様々な出来事を私の体験に基づいて記述していこうと思います。目的はシステムの原理原則に立ち返ること、そして出来れば「なぜシステム化するか」、「システムをどう考えるか」システム評価の定点(定点観測の定点)を見つけることにあります。

テーマを明確にするための多少のフィクションはありますがご容赦ください。

本コラム「システム随想」がこれからのシステムを考える人に何かしらの影響が及ぼせれば幸いです。

2006 年 6 月

(株)タイムインターメディア
代表取締役社長  佐藤 孝幸