$\LaTeX$で印刷に適した文書を作成する


2022年 12月 01日

卒業論文や修士論文は,印刷した紙を製本して提出する場合が多いと思います.自分で製本する場合,紙を綴じる内側の余白を多く取らないと,内側に位置する文字が読めない悲劇に見舞われる可能性があります.
この記事では,LaTeXで印刷に適した文書を作成する方法を紹介します.

jsbookの基本的な文書

日本語の場合,学位論文(卒業論文,修士論文,博士論文)はjsbookの利用が多いです.
jsbookの基本的な文書とその作成ファイルは,以下になります.

\documentclass{jsbook}
\begin{document}
\chapter{序論}
\section{背景}
あいうえお...(省略)
\end{document}

文書は,本と同じ見開き形式で表示しています.jsbookの基本設定は,A4サイズの用紙,10ptの文字サイズです.また,1行は40文字というお約束があります.
製本時に重要となる,文書内側の余白が小さいことが確認できます.また,ヘッダーが文章の横幅と一致していないです.製本にも,webでの閲覧にも適していないと思います.

$\LaTeX$のパラメータ

文書レイアウトの変更前に,この記事で登場するパラメータを説明します.登場するのは,以下の4つです.

  • fullwidth: ヘッダーの横幅
  • textwidth: 文章の横幅
  • oddsidemargin: 奇数ページの左側(内側)の余白
  • evensidemargin: 偶数ページの左側(外側)の余白

図に示した長さは,目安としてお考えください.パラメータに対して,Xcmのように直接長さの指定ができますが,この記事では採用しません.a4,b5,US Letterなどの文書サイズに対して,汎用的に利用できる形で文書レイアウトを変更します.

web閲覧に適した文書

documentの開始前,texファイルの先頭を以下にすることで,web閲覧に適した文書が作成できます.

\documentclass[12pt, openany, oneside]{jsbook}
%\setlength{\fullwidth}{\textwidth} % ヘッダーを文章に合わせる
%\setlength{\textwidth}{\fullwidth} % 文章をヘッダに合わせる

用紙サイズがA4の場合,文字サイズは12ptがお勧めです.
openanyを設定すると,章の始まりが奇数ページで固定されなくなり,空白ページの挿入を回避できます.
onesideを設定すると,奇数ページと偶数ページのデザインが統一されます.
ヘッダーと文章の横幅を統一しても良いですが,文字サイズ12ptでweb閲覧の場合,2つの横幅が一致していなくても違和感は無いです.

印刷に適した文書

documentの開始前,texファイルの先頭を以下にすることで,印刷に適した文書が作成できます.

\documentclass[12pt]{jsbook}
\setlength{\fullwidth}{\oddsidemargin}
\setlength{\oddsidemargin}{\evensidemargin}
\setlength{\evensidemargin}{\fullwidth}
\setlength{\fullwidth}{\textwidth}

\oddsidemargin\evensidemarginを入れ替えた後,ヘッダーの横幅を文章の横幅に合わせています.
\oddsidemargin, \evensidemargin = \evensidemargin, \oddsidemargin という変数の交換が出来ないので,\fullwidthを一時変数として利用しています.

ヘッダーの外側部分の余白を保ったまま,内側の余白を最大限に取る設定です.
内側の余白をこれ以上取る場合,外側の余白と合わせて上下の余白も小さくしないとバランスが悪くなると思います.余白を変更するのではなく,製本の方法を変更するのも1つの手です.

終わりに

この記事では,LaTeXで印刷に適した文書,web閲覧に適した文書を作成する方法を紹介しました.紹介した設定や変数の変更で,より余白の大きい文書,余白の小さい文書も作成できます.余白は,内側と外側,上下のバランスも重要です.余白を上手く調節して,読みやすい文書を作成しましょう.

提出する論文について,文書の形式が指定されている場合は,その指示に従いましょう.専門業者に製本を依頼する場合,必要となる内側の余白は,小さくなります.印刷前に,文書の形式を確認すると良いでしょう.