情報処理学会 第85回全国大会 参加報告


2023年 03月 27日

情報処理学会 第85回全国大会に参加してきました.その内容について報告します.

基本情報と検索情報

一般社団法人 情報処理学会は,毎年3月に全国大会を開催しています.
こちらの情報によると,昭和35年(1960年)に第1回全国大会が開催され,平成14年(2002年)から3月に全国大会,9月にFIT 情報科学技術フォーラムを開催する現在の日程になったようです.

第85回全国大会は,2023年3月2日(木)~4日(土)の期間,電気通信大学にて開催されました.

3つの特別会場,5つのイベント会場,A~YとZA~ZMの会場が用意され,同時刻に30件以上の口頭発表が実施されました.弊社の知識工学センターも入居する電気通信大学UECアライアンスセンターの利用はありませんでしたが,西地区と東地区の多くの建物が学会会場として利用されていました.一般で参加した場合,1万5千円か1万7千円の料金がかかります.自分は,研究発表はせず,聴講参加しました.発表タイトルをキーワード検索したところ「最適化」は25件,「遺伝的アルゴリズム」は9件,「進化」は6件ヒットしました.

3日間の日程

3日間のプログラムは,頂いた大会案内が一番分かりやすいと思います.

参加・聴講する候補として,事前に以下の研究発表とイベントをピックアップしました.

日付時間場所内容
2日(木) 09:30-11:00C403AI TECH TALK
12:40-15:10C301アルゴリズム (2)
15:20-17:20C303IT情報系キャリア研究セッション
3日(金)11:40-12:30C403ランチョンセミナー
12:40-15:10東4-201数理最適化の理論と応用
15:20-17:20C303IT情報系キャリア研究セッション
17:30-18:00B201懇談会
4日(土)09:30-12:00東6-204知能システム(17)
13:20-15:20東4-201進化計算
13:20-15:20C403第5回中高生情報学研究コンテスト
13:20-15:20B棟情報科学の達人3.0

この中から,いくつかの研究発表とイベントに参加しました.

参加報告

会場は電気通信大学です.正門はいつも通りで,お知らせや看板は見当たりませんでした.
大学の敷地内で学会の看板を見つけました.

1日目は,進化計算を利用した眼鏡のデザイン,EC倉庫の巡回路導出,倉庫業務における顧客オーダーの効率化などの発表を聴講しました.弊社は,他社と協働で複数あるEC倉庫の在庫配置最適化に取り組んだことがあります.EC倉庫が1つの場合でも,その中で進化計算を活用する余地があると気付けたことは,大きな収穫でした.
シミュレーテッドアニーリング(焼きなまし法)を用いて,大きな覆面算パズルを生成する発表は,一番可能性を感じました.弊社は,世界記録の巨大ナンプレパズルを作成した実績があります.今回の研究を発展させることで,世界記録の覆面算パズルを作成できると思いました.

2日目は,最初に 日立北大ラボ×北海道大学コンテスト2022「未来の自律分散型まちづくり」表彰式 に参加しました.ランチョンセミナーと書いてありましたが,ランチは提供されず,個人的に持ち込んだランチの飲食も禁止でした.過去3年間のコンテスト問題は以下の通りです.

  • 2019年:時空間最適化(買物支援)
  • 2020年:多目的時空間最適化(地域エネルギーシステム)
  • 2021年:階層的時空間最適化(地域エネルギーシステム)

今年のコンテストは,農機シェアリング等を対象とした時空間最適化問題でした.コンテスト成績上位者の記念講演を聴講しましたが,最適化に進化計算を利用されている方は,残念ながらいませんでした.焼きなまし法(シミュレーテッドアニーリング),動的計画法,山登り法,ビームサーチ,貪欲法から2つ以上を組み合わせた最適化と様々な計算量削減の工夫をしている人が成績上位になっている印象を受けました.
自分も進化計算コンペティション2020,2021でトップ賞を受賞したときは,進化計算を利用せず,様々な計算量削減の工夫をしたうえで単純な最適化法を使っていました.そのため,最適化のコンテストやコンペティションと進化計算は相性が良くない可能性が高いと改めて思いました.

研究発表では,進化計算を利用した大規模イベントにおける分散退場オペレーションの多目的最適化,カーシミュレーションの最適化,自動車車体塗装のための複数ロボットアームの経路設計などの聴講をしました.進化計算コンペティション2022とは異なる東京ドームを対象とした多目的最適化結果,強化学習が利用されることも多いOpenAI GymのMountainCar問題に対して進化計算を適用した結果,複雑な実問題に対して進化計算を適用した結果など,いずれの発表も興味深く聞かせて頂きました.個人的には,車体塗装に関する研究発表が一番素晴らしいと感じました.論文が2ページに制限されているため,ロボットアームの経路に関する図が発表スライドにしか載っていないのが非常に惜しかったです.

3日目は,中学生と高校生のポスター発表を見ました.1つの会場に70枚以上のポスターが貼ってあり,200人以上の人がいて熱気が凄かったです.非常に幅広い発表があり,どれも面白かったです.すべてのポスターを詳しく見ることは出来なかったのですが,こちらでポスターが公開されているため,後から確認することができました.同時刻に小学生が講演もしていたみたいで,日本の若者は凄いと思いました.

感想・終わりに

電気通信大学は,駅から近く新宿や渋谷へのアクセスも良い立地にあると思うのですが,オンラインで参加される方が多い印象を受けました.現地に来て色々な経験をすることも大事な勉強だと思うのですが,自分が聴講した研究は,オンラインで発表をされる方が多かったです.
発表の場での失敗は,海外での発表や商談の機会では1発アウトの可能性もあるので,学生の内に経験して場慣れした方が良いと思いました.
失敗例:

  • 会場はVGAケーブルしか用意がなかったので,自分のラップトップで発表ができない
    • 対処:ラップトップや変換ケーブルを借りる.USBに発表資料をバックアップして持ち運ぶ.
  • 会場が分からず迷子になり,遅刻する
    • 対処:10分前行動.団体行動.現地の人に聞く.地図を印刷して用意.会場を下見しておく.
  • ラップトップやレーザーポインターの電源が途中で切れる
    • 対処:充電器やモバイルバッテリー,替えの電池を携帯する.ポインターを2つ用意.

失敗以外にも現地に行かないと得ることができない経験がたくさんあると思います.
自分は,学会発表は現地参加をお勧めします.この記事が皆さんの学会参加への参考になれば幸いです.