書評:人工知能の「最適解」と人間の選択


2017年 11月 23日

人工知能の最適解(390x600).jpg

NHK出版新書

書評:人工知能の「最適解」と人間の選択

著者    NHKスペシャル取材班
出版社  NHK出版
定価   780円(本体)
頁数   224ページ
判型   新書判
ISBN   
978-4-14-088534-5

AIについて知るには、ちゃんとした技術書を読むに限るが、AIについて非技術者に説明するときの参考に、AI一般教養書のような本もある程度目を通しておこうと思って読んだ本だ。
そういう場合、特定の著者が考えを述べた本より、取材を伴った本の方が向いていると思って選んだ一冊である。

人工知能が、最近どのような事に使われ始めたか、とくに海外での利用についての紹介がかなり含まれている。
世界では「犯罪」が非常に多く、犯罪予防のためにAIを既に活用している事例が多いが、日本ではそれほど報道されていない気がする。
要するに、犯罪予測システムがある。犯罪者が再び犯罪を犯すかどうかの再犯率を予測たり、裁判にもAIが利用されているようだ。

そして、労働者をAIが監視し、指導し、などということも当然のように起きている。
もちろん、ちゃんと使えば効果は大きいと思うが、使い方によってはAIによる管理社会になりかねない。

かなりのことが、現在専門家が行っているより上手に処理できる可能性がある。
それも、今、専門職として高く評価されている職業である。
政治家もAIにやらせたほうがマシという考え方は、既にかなり一般的と思うがどうだろう。

将棋についての話もかなりある。
もう棋士よりもAIの方が遥かに強いことは誰しも認めていることだ。
今では、AIの示す手と同じ手をどれだけ打つかで棋士の棋力を判定することも行われている。
こんなことになると、もう将棋界は終わりかと思うと、違った動きになっている。
棋士の凄いところは、負けることで落ち込んでいるのではなく、遥かに強い相手が現れたことで、まだまだ将棋には未開の分野があることが分かり、さらに探求したいということだ。
強さへのあくなき探求があるのだ。
そして、実際、最近の将棋の世界は、人工知能の影響で、今までの定跡、常識がどんどん変わりつつある。
将棋界は、一時はAIを毛嫌いしバカな事件も起こしたが、今の一線の棋士や若手はAIを大いに利用しようとしているようだ。

AIは人類にとって「天使か悪魔か」は、結局人間がAIにどう対処していくか次第だろう。
そして、シンギュラリティが来るという話もあるのだが、シンギュラリティが来る前に、AIが社会変革を迫ってくる分野がいっぱい出てくるだろう。
日本は、旧勢力が必死で変革を拒むと思うが、そんなことをしていると日本が世界に置いていかれる可能性が大きい。
AIは、ハードの進歩により、ますます加速しそうな状態で、これからどんどん様々な問題を投げかけてくるだろう。
特に、社会、労働に関しては激しい変化を伴うことになるのだろ。

いずれにしても、AIがコモディティ化して、AI無しでは社会が動かなくなる日は近いだろう。
人類は、AIを操縦できるほど賢いか、それが問題だ。