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書評:『もうひとつの脳』


2018年 05月 18日

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もうひとつの脳
ブルーバックス B-2054

著者  R・ダグラス・フィールズ( R. Douglas Fields, Ph.D.)
監訳  小西史朗   
翻訳  小松佳代子
発行日  2018年4月20日
サイズ  新書, 538頁  
ISBN  978-4-06-502054-8
価格  1,500円(本体) 
発行所 講談社 

The Other Brain
The Scientific and Medical Breakthroughs That Will Heal Our Brains and Revolutionize Our Health
By R. Douglas Fields
発売日: 2011/1/11
ISBN-13: 978-0743291422
出版社: Simon & Schuster; 1版 (2011/1/11)

今回は、数学・コンピュータ系とはちょっと違う脳科学系の本を紹介しようと思う。
といっても、専門書ではなく、BLUE BACKSであり、ポピュラーサイエンスの本である。

今非常に(異常に)騒がれている人工知能は、多くの場合ニューラルネット、ディープラーニングの場合が多い。
人工知能は、もっともっと多様なのだが、フィーバーとは得てしてそんなものである。

その技術の根拠(参考)になっているのが、脳であり、ニューロン(神経細胞)である。
ニューロンは大脳皮質だけだと150億、大脳全体で850億、小脳はさらに多くて1000億くらいあるという。
結局、大脳皮質は、ニューロンの総数の約1割に過ぎないようだ。
なので、大脳皮質だけをシミュレーションしても、一部のシミュレーションしかしていないと思うべきだろうか。

シナプスの総数の説明はなかなか見つからないが、ひとつのニューロンが数千のシナプスを持っているようなので、シナプスの総数は数百兆というとんでもない数になる。

さて、ここまでは、古い話だ。古いというのは、20世紀の脳科学といっても良いだろうか。

この本のタイトルの「もうひとつの脳」の研究が21世紀になって急激に研究が進んで、さまざまなことが分かってきた。
脳は、ニューロンだけで出来ている訳ではない。
血管も張り巡らされているが、それ以外にグリア細胞(Glial cell)がある。
このネーミングは、Glueから来ているらしく、神経細胞を支えている詰物、接着剤、固定剤で、たいした働きはしていないと長らく考えられていた。

しかし、脳の神経細胞の割合は、重さで1割、細胞数だとたった2%程度らしい。
つまり、神経細胞は、脳のごく一部でしかないということだ。
残りの大部分はグリア細胞である。
といっても、その他の細胞をまとめてグリアと呼んでいたのだが、何種類かあり、いろいろ働きが違うことが分かってきた。
ここでは、グリアの詳細の説明は省く。

そして、頭が良いとかは、脳の病気の原因とかは、どうやらグリアに由来することが多いらしい。

アインシュタインの脳が保管され、天才の研究に使われ続けてきたのだが、頭が良い理由とまことしやかに言われていたことと、アインシュタインの脳は一致しないことが多かった。
脳は小さめで、神経細胞にはめだった特徴はなかったようだ。
しかし、グリア細胞は圧倒的に違っていた。

AIについて勉強するなら、同時に脳科学や遺伝についても、ある程度知っておくことが望ましいだろう。
そして、この分野は今世紀になって、急激に発達した。
20世紀までの知識が大幅に修正されたというか、革命が起きたくらい違うのである。
それらは、医学、看護学、薬学など医療分野では当然の知識として今では教えられている。
脳、脳科学について古い考えに基づいて話していると、「あ、この人、若い時に得た知識しかなくて、新しいことを何も知らない」と思われてしまうので注意しよう。
大人になると、神経細胞は死ぬだけというのは典型的なミスであり、老人でも神経細胞が生まれることもあり、これを利用した治療方法などが盛んに研究されている。

本書は、グリア細胞に関してかなり網羅的に、今後の影響なども含めていろいろ説明されている。

脳の主役はニューロンであるとい考え方は古いのだ。
主客転倒し、脳の主役はグリア細胞で、もうひとつの脳こそ主役かも。